このタイトルがすごく身にしみた。秘書時代から、「お礼状」は欠かさず書いていたものだが、ほとんどが「先輩秘書からの流用」だった。一回、自分でお礼状を書いたことがあるが、ボスにZ会東大コースの小論文の如く直され、しまいには先輩秘書の作ったお礼状のほうがよかったじゃないかと思ったりもした。
3年間でパイルのようにたまったお礼状を、前職には内緒で現職でも使っている。が、日々ブラッシュアップとはいい響きで、鬼のようにしごかれているのだ。とりわけ、職場きってのG党のG先輩にチェックしてもらうときは。
10月28日、29日にロジスティクス全国大会という日本の名だたる企業のロジスティクス専門の方を呼んだ講演会を行った。
その面々の、「お礼状」および「謝礼の銀行振り込み通知」20名分を松井がひとりで書かなければならない。
過去の先輩のデータはしっかりある。それを流用したら、G先輩に殺された。そういう痛い経験があったため、とりあえず、過去の秘書時代のデータベースを駆使して作成したが、「はぁ?」とG先輩から突っ返され、「ここの部分、自分で考えろ」と言われ、ボロ雑巾の如く、残業をする。
あー、このお礼状の半分は秘書が見て、捨てるんだぜ。過去のセンパイが作ったデータでいいじゃねぇかーと脳みそまで真っ黒になっていた松井夫人。は、頭を絞って文面を思いつくのだが、「どーせ、これビジネス本のパクリでしょ」とまた蹴られる。そして、「巨人戦が始まるから」と早々に帰る。
泣けてくる。
そういうときに考えるのは神戸と千葉県M市と名古屋と長良川である。そんなことでテンションがウィーンと上がるんだから、謝礼の文面作成で深夜残業までしてしまったのだ。もう勘弁して・・・
深夜残業=鼠先輩がセットでつく。というよりも、先輩として、後輩より先に帰るまいという鼠先輩なりの配慮だろう。
「お礼状って軽く見がちなんだけど、『松井』の文章なんだぞ。これ一枚で松井のいる協会のイメージよりも、松井のイメージが変わる。隣の部署は、完全に前任者のコピーを使っているが、時間を書けたお礼状については、必ず誰かが見てくれている」
ミッキーマウスの模様のネクタイをした文字通り鼠先輩の一言がずんときた。
そして、今日、巨人が勝ったおかげか、何とかG先輩のOKをもらった。
が、その後、意外な返事が来た。
「松井、こないだの『ロジスティクス基礎講座』何枚名刺もらった?松井は、受講生で来ているんじゃないぞ。運営はちゃんとやったみたいだが、講師との昼食に同行は何回した?」
R社の方、S社の方・・・4、5枚は頂いた。そして、それなりのお礼状は書いた。講師全員とは名刺交換していない。
「会社の『会議費』で落とせるんだから、そっちのほうが割りいいぞ」と鼠先輩のフォローがあった。ショックのほうが大きかった。
あの場には先輩はいなかった。先輩がいなかったから、気が緩んでいたかもしれない。同期が逐一G先輩に報告をしていたのか?そんなひどい同期か・・・
大人は冷たい!!
「先輩、それ言ってください」ではなかった。完全な死角だった。
あなた社会人でしょ。それぐらいのことは自然にしないと。あなた、あの時何をしていた?同い年ぐらいの若きロジスティシャンと歓談していたよね。それじゃだめだよ。知識は習得したかもしれないけどソフト面が全くできていない。あなた、まだ学生なの?バイトでここに来ているの?
松井、あなたは、3年間の社会人で、何をしてきたの?
悔しかった。何をどうしたらいいのかわからない自分がいた。
ぬるま湯の環境で、先輩の背中を見て、つまり、先輩のマネをして、自分の頭で考えることをあまりしてこなかった。優等生の技を盗んで、それを自分のものにしていた。完全自分オリジナルのものってほとんどない。他人からの借用物をオレ流に変化することは長けているが、ゼロから自分で考えるって、苦手だ。それを習慣付ける。
印象。会議や大会や委員会で挨拶するときの印象。カミカミで西の訛りだらけの電話応対。これによって、外部のお偉い様方は、松井の印象を作っている。
ただ、メンバーの方で、鉄道ファンというつながりでお世話になっている方がいる。少しずつつながりができている。
カミカミだし、関西の方になると完全に同化するし、それでなくても明らかに関東のアクセントではない、それでもいい。気持ちが伝わればそれでいい。
自分から動いていかなければならない。
20:30、新橋に向かった。
「替え玉するんや」
久しぶりに替え玉をした。そして、TSのスペースまでを酒の杯が侵食した。
ラーメンと餃子と酒。餃子には、真っ赤な豆板醤をたっぷりつける。
「ほんまよぉけ飲むなぁ。しかも豪快に」
そうでもしないと、やっていけない。


